いつ雨が降り出してもおかしくない空模様なので、あまり悠長にもしていられない。
地元の人が落ち着いて呑めるような店を探して、路地をうろついていたらマダムが「あそこがいいんじゃない?」と言って一軒の小体な居酒屋を指差した。
看板には「ほっこり酒場さとうみ」と書いてある。
自分でいうぐらいだからさぞやほっこりした空間が広がっているだろうと、ガラス戸を開けた。
・・とたんに聞こえてきたのは「イラッシャイマーセェ」という奇妙なイントネーションの日本語。
これは以前芦別の伝説的クラブ「○ボ」でよく飛び交っていたタガログ訛りの日本語ではないか。
まさか北陸敦賀のほっこり酒場で、懐かしい?タガログ訛りが聞かれるとは思わなかった。
今から思うとなぜこの時点で引き返さなかったのか?
この店が放つ不思議な磁力に吸い寄せられるように、カウンターに腰掛けてしまった。
「ナニ飲むネ?」と言われてカウンターの上を見ると、ここにも福井の地酒の一升瓶が並んでいる。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」・・・って別に虎児を得に来たわけではないが、虎穴に入ってしまったことだけは間違いないようだ。
どんな場所でも十分もすれば自分ちのようにくつろげるのが特技のわれわれは、気がついたらママさんの身の上話を聞きながら、三人でカラオケを熱唱していた。
「フィリピンのオカアサンが病気なのでワタシガタクサン仕送りしなくてはいけないの」だの「キョウダイがたくさんいて家が貧しい」とかいうよくある話しをしながら、テレサテンなどを歌われるとつい足長おじさんのような気分になってくる。
いいかげん場もぐだぐだに煮詰まった頃、やっと男性が一人入ってきた。
それをきっかけに少し正気に戻り、腰を上げようとしたところ、ママさんが「シャッチョ〜、このお客さんを送っていってあげて」と勝手に交渉してくれている。
なんでもこのシャッチョ〜さんは、仕事であちこちのホステスさんの送迎をしているという。
「怪しいものじゃありません」といって渡してくれた名刺は十分訳がわからない怪しい代物だった。
なにやらレートの違いなのか、しっかり不明朗な支払いを済ませて、なぜか操られるようにシャッチョ〜さんの車に乗ってしまった。
さてそこからの記憶は酔いのせいか、シャッチョ〜さんの毒気に当てられたのかあまり定かではない。
地元の人間なら誰でもわかるホテルのはずが、あちらこちらと走り回りいっこうにたどり着かない。
訊ねると「ああ大丈夫、大丈夫」と答えるが、ぜんぜん大丈夫な感じがしない。
「ちょっとコンビニで訊ねてくるわ」といったので、魔界から抜け出すには今しかないと車から降りてレジのお兄ちゃんにタクシーを呼んでもらった。
シャッチョ〜さんと一悶着あるかと思ったら、意外に「あぁそっちの方が確実かも」と言ってさっさと車に乗っていってしまった。
なぜかお金は一銭も請求されなかった。
なんだったんだろう?あのシャッチョ〜さん・・・・。
魔界に迷い込んだような敦賀最後の夜はこうして無事?幕を閉じた。
しかしわれわれが踏み込んだのは、敦賀の闇のほんの入り口のような気がする。
深い・・・あまりに深い町敦賀。
やっとたどり着いたホテルで倒れるように深い眠りについた。
置いてきた車のこともすっかり忘れて・・・・。
地元の人が落ち着いて呑めるような店を探して、路地をうろついていたらマダムが「あそこがいいんじゃない?」と言って一軒の小体な居酒屋を指差した。
看板には「ほっこり酒場さとうみ」と書いてある。
自分でいうぐらいだからさぞやほっこりした空間が広がっているだろうと、ガラス戸を開けた。
・・とたんに聞こえてきたのは「イラッシャイマーセェ」という奇妙なイントネーションの日本語。
これは以前芦別の伝説的クラブ「○ボ」でよく飛び交っていたタガログ訛りの日本語ではないか。
まさか北陸敦賀のほっこり酒場で、懐かしい?タガログ訛りが聞かれるとは思わなかった。
今から思うとなぜこの時点で引き返さなかったのか?
この店が放つ不思議な磁力に吸い寄せられるように、カウンターに腰掛けてしまった。
「ナニ飲むネ?」と言われてカウンターの上を見ると、ここにも福井の地酒の一升瓶が並んでいる。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」・・・って別に虎児を得に来たわけではないが、虎穴に入ってしまったことだけは間違いないようだ。
どんな場所でも十分もすれば自分ちのようにくつろげるのが特技のわれわれは、気がついたらママさんの身の上話を聞きながら、三人でカラオケを熱唱していた。
「フィリピンのオカアサンが病気なのでワタシガタクサン仕送りしなくてはいけないの」だの「キョウダイがたくさんいて家が貧しい」とかいうよくある話しをしながら、テレサテンなどを歌われるとつい足長おじさんのような気分になってくる。
いいかげん場もぐだぐだに煮詰まった頃、やっと男性が一人入ってきた。
それをきっかけに少し正気に戻り、腰を上げようとしたところ、ママさんが「シャッチョ〜、このお客さんを送っていってあげて」と勝手に交渉してくれている。
なんでもこのシャッチョ〜さんは、仕事であちこちのホステスさんの送迎をしているという。
「怪しいものじゃありません」といって渡してくれた名刺は十分訳がわからない怪しい代物だった。
なにやらレートの違いなのか、しっかり不明朗な支払いを済ませて、なぜか操られるようにシャッチョ〜さんの車に乗ってしまった。
さてそこからの記憶は酔いのせいか、シャッチョ〜さんの毒気に当てられたのかあまり定かではない。
地元の人間なら誰でもわかるホテルのはずが、あちらこちらと走り回りいっこうにたどり着かない。
訊ねると「ああ大丈夫、大丈夫」と答えるが、ぜんぜん大丈夫な感じがしない。
「ちょっとコンビニで訊ねてくるわ」といったので、魔界から抜け出すには今しかないと車から降りてレジのお兄ちゃんにタクシーを呼んでもらった。
シャッチョ〜さんと一悶着あるかと思ったら、意外に「あぁそっちの方が確実かも」と言ってさっさと車に乗っていってしまった。
なぜかお金は一銭も請求されなかった。
なんだったんだろう?あのシャッチョ〜さん・・・・。
魔界に迷い込んだような敦賀最後の夜はこうして無事?幕を閉じた。
しかしわれわれが踏み込んだのは、敦賀の闇のほんの入り口のような気がする。
深い・・・あまりに深い町敦賀。
やっとたどり着いたホテルで倒れるように深い眠りについた。
置いてきた車のこともすっかり忘れて・・・・。