lodan生きるのも嫌だが、自殺する度胸もない。
着るものにも美味い食い物にも興味がない。
趣味は読書ぐらい。
しかも哲学書や思想書。
人間嫌いで、旅行なんぞもする気がない。
人の集まるところにも行きたくない
奥さんを早くに亡くし、一人暮らし。
生きがいなんぞはまったくなし。


そんな人にどんなことをいえばいいべか?
もちろんその人は何かをいってほしくて来たわけではない。
ただもうしばらく人前には出ないつもりなので、最後に会いに来たという。
何も言ってほしくないとわかってはいても、ほっとけないべ。
とくに「最後に」なんぞいわれちゃ、気にするなという方が無理だ。
ところがこういう人にかける言葉が見つからない。

dogen「学生の頃、道元を読んで感銘を受けた」という話をしていたので、宗派ちがいだが月参りにきた住職にその話をした。
人生に夢も希望もまったくもてない人にどんな言葉をかけたらいいだろうか?と聞いてみた。
すると住職は「うーん最近は僕も同じだ」という。
ずっこけたね、まったく。
たしかに年を重ねてくると、いろんなものに執着がなくなり、若いころのように感動することも少なくなる。
でもそこは宗教家なんだから、なんか尊いひとことをお願いしますよ・・・と、思っていたら「まぁ、それで終わったらありがたみがないね」といっていくつかの話をしてくれた。

夏目漱石に「則天去私」という言葉があり、意味は「小さな私にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きて行くこと」だという。
神経症を患い、胃潰瘍で苦しんだ夏目漱石を思えば深いものがある。
ほかにも菊池寛の「極楽」という短編やらを引き合いに出して色々ためになる話をしていただいた。

「則天去私」か・・・と店に降りて、掃除をしようとふと見たら「人生成り行き」の暖簾が目に入った。
そうかこれも「則天去私」といえるか。
今度そのお客さんを無理やり引っ張り出して、じっくりと暖簾を見せてやろう。
nari