ディランをオープンする前、三年間ほど左官屋をやっていたことがある。sakan
そこの親方というのが両足とも膝から下がなく、両方義足だった。
ところがこのオヤジ、鬼瓦のような顔をして、義足のまま自転車には乗るわ、足場を上がってきてモルタルを塗るわのスーパー身体障害者。

若いもんが原付に乗ってくると、免許もないくせにそれを乗り回して現場までやってくる。
「免許もないのに大丈夫かよ?」というと、「身障者だからお巡りも大目に見る!」とおかしな理屈をこねる。
五十年以上生きてきたけど、後にも先にもこんな威勢のいい障害者は見たことないわ。
しかもあちらの方もお達者で、働いていた時分のカミさんは七人目だという話だった。
一緒に飲みに行った人の話を聞くと、コレと決めた女がいると、いきなりかよわい身障者に変身して同情させるという。
いま考えるとなんともぶっ飛んだオヤジだった。

そんなことを厦門出していたら、昨夜きたお客さんと建築現場の足場の話になった。
今はほとんどがビデという金属製の足場だが、左官屋をやっていた頃は、ほとんどが丸太の足場だった。
・・っていう話をしたら、三十代の女性のお客さんは「ええええ〜」と驚いていた。
まったく見たことがないという。
そういやこのごろ見たことがないかも・・。

心なしかお客さんの自分を見る目が、「前世紀の遺物」でもみるように感じたのは気のせいだべか・・。
そんなに昔のことでもないつもりだったんだけどなぁ。
昭和は遠くなりにけり・・・か。
maruta21