5_3854055230「甲賀忍法帖」「魔界転生」など奇想天外な小説で知られる山田風太郎に「人間臨終図鑑」という奇書がある。
これは古今東西923人の臨終の様子をつづってある異色作だ。
十五歳で死んだ八百屋お七から、百二十一歳で死んだ泉重千代まで、没年齢順に分類して書かれている。
図書館にあった文庫本は、全三巻に分かれていたが、一巻がずっしりと分厚い。
ネットもない時代に、よくもここまで調べたものだ。

これを読んでいると、「人と生まれたからにはだれにでも必ず死は訪れる」ということを再認識させられる。
財産があろうと、信仰心があろうと、無残な死を遂げる人も多いし、極悪非道な人生を送っても長寿で安らかな死を迎える人もいる。
まさに「老少不定 われや先 ひとや先 遅れ 先立つ人は元のしずく 末の露よりも繁しといえり(蓮如上人)」だ。

人によっては臨終の言葉も書かれていて、それもまた面白い(不謹慎か?)。
たとえば勝海舟は、「胸が苦しいからブランデーを持ってこい」といって、それをクイッとあけると、ひっくり返って、その二日後に「コレデオシマイ」と言って死んだという。
ゲーテの「もっと光を」なんかより、ずっとイカしている。
高杉晋作の「おもしろきこともなき世を面白く・・」もいいが、司馬遼太郎の「俄(にわか)」のモデルで明治の侠客「明石家万吉」の「ほな いてくるでぇ」もすごい。
まるで近所へ煙草でも買いに出かけるような調子だったという。
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山田風太郎は生前中島らもとの対談で、一連の奇想天外な作品について「いや、徹頭徹尾無意味な小説を書こうと、十年か十五年書いていたら、それにしても無意味だと思ったもんだから(笑)」と答えている。
かなりユニークな人だったようだ。
対談した中島らもも、自分で予想していたように、酔って階段から落ちて死んだ
いまはこういう奇天烈な人たちは、ほとんどいなくなってしまった。
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