泥酔亭の成り行き日記

カテゴリ: 旅行

wst1803020120-p1雷鳴の轟く中、車中でマダムに「鵜ノ瀬」をかんたんにご説明する。
鵜の瀬のある遠敷川(おにゅうがわ)の神様が釣りにかまけて、奈良東大寺の二月堂建立に間に合わなかったため、お詫びのしるしに毎年「お香水」を送る約束をした。
3/2の夜、白装束の僧たちが神宮寺の井戸から汲んだ「お香水」を遠敷川に流し、この水が十日間かけて奈良東大寺にある二月堂の若狭井に届くという。
東大寺では毎年3/12にこの「お香水」を汲むお水取り神事が行われている。
と、にわか御神水マニアにレクチャーしているうちに、ポツポツと雨が降り出してきた。

鵜の瀬は想像していたよりも開けた明るい感じで、風通しのいい清らかなところだった。
DSC00761ひとしきりあたりを散策して、ここでも御神水を少しいただく。
なぜこれほど水に興味が出てきたのかと思い返したところ、どうも2017年の静岡旅行のさい富士山の伏流水を飲んで、あまりの美味しさに感激したのがきっかけのような気がする。
それから旅に出るときは必ずのように、水に関する場所を盛り込んでいる。
いよいよ雨脚も強くなってきたので、遠敷明神を祀るお堂に参拝して、鵜の瀬をあとにする。

今夜の宿は、三方五湖のひとつ日向湖(ひるがこ)湖畔にある「漁師の宿はっとり」。
その前に近くの温泉「きららの湯」に寄ることにした。
さて入浴!と思って、二階に上がるとそこにはなんと「鍼灸」の文字が・・・。
マッサージやカイロは見たことがあるが、温泉に鍼灸があるのは珍しい。
ってことで、自宅で灸をするほどの鍼灸マニアのマダムはさっそく施術していただくことした。
思いのほか雨で体も冷えていたらしく、温泉がことのほか体に染み渡る。
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IMG_20190514_162748鍼灸だの温泉だので英気を養ったあと、すぐさま宿屋に直行したいところだが、その前に近くにある「早瀬浦」の酒蔵を訪ねることにした。
ナビを頼りに近くまで行くと、車一台がやっと通れるような道しかない。
付近をぐるぐる廻ったあげく仕方がないので、雨の降る路地を歩いて探すことにした。
しばらく歩くと細い道の向こうに高い煙突がそびえている。
ここに違いないと、車に戻り車幅ぎりぎりの道をなんとかして早瀬浦酒造に到着。
時間も遅かったので、酒蔵の仕事は終わっていたが、社長さんからいろいろな話を聞くことができた。
北海道でも早瀬浦が買えることを言うと、「どこから廻っていってるんだろう?」と、不思議そうにしていた。
ふと蔵の方を見ると、そこには外人さんが一人蔵人に混じっていた。
ここ数年外人さんの蔵人も増えているという。
そこらへんも聞きたかったが、あまり長居をしてもいけないので、四合瓶を購入して蔵をあとにした。
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さ、今夜はフィリピン居酒屋にハマる心配もなく、若狭の海の幸で一杯やるとするか。
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IMG_20190514_103808今日は昼過ぎから天気が崩れるらしいので、屋外で行きたい場所には午前中に廻ったほうがよさそうだ。
まず第一の目的地は「瓜割の滝」
なぜかここ数年、水の名所に惹かれる。
で、敦賀を離れる前に腹ごしらえをしておこうと、道路沿いにあったレストランのようなところに何も考えずに飛び込んだ。
さて、何を食おうかと考えていたらウェイトレスがやってきて「イラッシャイマセーせぇ」と聞き覚えのあるタガログ訛り
一瞬昨夜の「ほっこり酒場」に舞い戻ったような錯覚に見舞われたわ。
なんで敦賀にはフィリピン女性がこうも多いのだろうか?
原発マネーが飛び交っていた頃の置き土産なんだろうか。

IMG_20190514_104628ま、それは置いといて「お得」と書かれている「地元の定食」を注文。
地元のお米「イクヒカリ」を使った「へしこのおにぎり」・・・。
頼んだあとメニューを見直して不安になったが、出てきた「へしこのおにぎり」は予想通りの微妙な代物だった・・・。
「今日はしじみがないから、アゲにシタよ」と一方的に変更された味噌汁で、なんとか「へしこのおにぎり」を流し込んで、店を出た。
さ、気を取り直して出発!と思い、店の看板を見て吹き出した。
さきにこの看板を見てたら入らなかったのに・・・・。
ってなことで、「話のタネになってよかったじゃないか」と無理やり笑い話にして、瓜割の滝へ向かった。
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DSC00748三方五湖を右手に通り過ぎ、若狭町へ向けて車を走らせること40分、瓜割の滝のある天徳寺に到着。
神社に興味はあるが、なぜか仏閣には興味がわかないので、天徳寺を軽くスルーして瓜割の滝へ向かう。
ここも泰澄大師が開いた聖地だということだ。
大師がみずから刻んだ馬頭観世音像を安置しようと、神水を探していたが見つからないので、ある岩の上に置いて嘆いていたところ、八大龍王の化身が現れ、岩が割れ神水が吹き出したという。
あたりはじつに神さびた雰囲気が漂い、古びた鳥居がひとつ建てられ、水の流れる音だけが響いている。
ここでも御神水を汲んで、次なる目的地「鵜ノ瀬」に出発。
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少しずつ雲が出て、風も吹き始めてきた。
ここから鵜の瀬までは30分もかからないようだ。
それまで雨よ降らないでくれ!と、運転しているそばから、空では雷が鳴り出した
風雲急告げて・・・るのか?
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IMG_20190513_211619敦賀の夜の魔窟から無事?脱出したらしく、ホテルのベッドの上で目が覚めた。
とりあえず所持品を確認したところ、なくし物、落とし物もないようだ。
時計を見るとam8:30、チェックアウトまでもう少し眠れそうだと横になったが、なにか大事なことを忘れているような気がする。
酒のたっぷり残った頭をフル稼働させると、大変な言葉がよみがえってきた。
昨夜の「哲ちゃん」のおかみサンは「朝九時まで移動させれば駐車しても大丈夫ですよ」というようなことを言っていた。
九時を過ぎたらどういうことが起きるかを考えるより、今はまず車を移動させなければ・・・と、考えているあいだにも時間は容赦なく過ぎている。

「タクシー呼んだら?」とマダムは言うが、初日の夜呼んだタクシーは到着まで二十分以上かかったではないか。
駐車場までは約2km、1km約十分で歩くとしてギリギリ間に合うかもしれない。
ってんで、車のキーと携帯を持ってホテルを飛び出した。
外へ出てみるとピーカンのいいお天気・・・なんてのんきなことを考えている場合ではない。
通勤、通学らしき人々を追い越しながら駐車スペースへ急ぐが、思ったように足が動いてくれない。
途中、松本零士のモニュメントが目に入る。
落ち込んでいる男のそばで女が空を見上げている、見ようによっては不吉な像を横目に通り過ぎる。
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IMG_20190514_085814ようようのことで駐車場までたどり着いたが、記憶していたよりずっと広くこの時間でもまだたくさんの車が停まっている。
しかもレンタカーのため、どれが自分の車かよくわからない。
キーに付いてあるナンバーで一台一台確認して歩く姿は、不審人物そのものだ。
と、○○銀行の前で発見!!・・・街頭時計を見ると8:57・・・・!!
次々と出社してくる行員たちに不審がられないように、平静を装って乗車。
エンジンをかけて安全な場所まで移動して、マダムにラインを送信した。
「愛車奪還計画 ミッション完了 これより帰還」。
気分はイスカンダル星から放射能除去装置を載せて地球へワープする宇宙戦艦ヤマトだ。

紙一重で危機を脱し、無事ホテルをチェック・アウトすることができた。
これも北陸総鎮守気比大社の御神徳であろう。
さらば敦賀の町よ・・もう二度と来ることはないだろうが、濃厚な思い出をありがとう。
朝っぱらから体も脳みそもフル稼働したせいかなにやら腹も減ってきた。
美浜に向かう前に敦賀最後の朝飯でも食うとするか。
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午後から天気は崩れるというが、今のところは心地よい青空が広がっている。
ってことで、やっと福井県三日目の旅が始まった。
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IMG_20190513_212510いつ雨が降り出してもおかしくない空模様なので、あまり悠長にもしていられない。
地元の人が落ち着いて呑めるような店を探して、路地をうろついていたらマダムが「あそこがいいんじゃない?」と言って一軒の小体な居酒屋を指差した。
看板には「ほっこり酒場さとうみ」と書いてある。
自分でいうぐらいだからさぞやほっこりした空間が広がっているだろうと、ガラス戸を開けた。
・・とたんに聞こえてきたのは「イラッシャイマーセェ」という奇妙なイントネーションの日本語
これは以前芦別の伝説的クラブ「○ボ」でよく飛び交っていたタガログ訛りの日本語ではないか。
まさか北陸敦賀のほっこり酒場で、懐かしい?タガログ訛りが聞かれるとは思わなかった。

今から思うとなぜこの時点で引き返さなかったのか?
この店が放つ不思議な磁力に吸い寄せられるように、カウンターに腰掛けてしまった。
「ナニ飲むネ?」と言われてカウンターの上を見ると、ここにも福井の地酒の一升瓶が並んでいる。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」・・・って別に虎児を得に来たわけではないが、虎穴に入ってしまったことだけは間違いないようだ。
IMG_20190513_213040どんな場所でも十分もすれば自分ちのようにくつろげるのが特技のわれわれは、気がついたらママさんの身の上話を聞きながら、三人でカラオケを熱唱していた。
フィリピンのオカアサンが病気なのでワタシガタクサン仕送りしなくてはいけないの」だの「キョウダイがたくさんいて家が貧しい」とかいうよくある話しをしながら、テレサテンなどを歌われるとつい足長おじさんのような気分になってくる。

いいかげん場もぐだぐだに煮詰まった頃、やっと男性が一人入ってきた。
それをきっかけに少し正気に戻り、腰を上げようとしたところ、ママさんが「シャッチョ〜、このお客さんを送っていってあげて」と勝手に交渉してくれている。
なんでもこのシャッチョ〜さんは、仕事であちこちのホステスさんの送迎をしているという。
怪しいものじゃありません」といって渡してくれた名刺は十分訳がわからない怪しい代物だった。
なにやらレートの違いなのか、しっかり不明朗な支払いを済ませて、なぜか操られるようにシャッチョ〜さんの車に乗ってしまった。
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IMG_20191011_215305さてそこからの記憶は酔いのせいか、シャッチョ〜さんの毒気に当てられたのかあまり定かではない。
地元の人間なら誰でもわかるホテルのはずが、あちらこちらと走り回りいっこうにたどり着かない。
訊ねると「ああ大丈夫、大丈夫」と答えるが、ぜんぜん大丈夫な感じがしない。
「ちょっとコンビニで訊ねてくるわ」といったので、魔界から抜け出すには今しかないと車から降りてレジのお兄ちゃんにタクシーを呼んでもらった。
シャッチョ〜さんと一悶着あるかと思ったら、意外に「あぁそっちの方が確実かも」と言ってさっさと車に乗っていってしまった。
なぜかお金は一銭も請求されなかった
なんだったんだろう?あのシャッチョ〜さん・・・・。

魔界に迷い込んだような敦賀最後の夜はこうして無事?幕を閉じた。
しかしわれわれが踏み込んだのは、敦賀の闇のほんの入り口のような気がする。
深い・・・あまりに深い町敦賀。
やっとたどり着いたホテルで倒れるように深い眠りについた。
置いてきた車のこともすっかり忘れて・・・・。
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IMG_20190513_211410池田町のかずら橋をあとにして、敦賀市内に入った頃には、かなり陽も傾いていた。
ホテルに戻ってから出直すのもめんどうなので、繁華街に車を停めて代行で帰ることにした。
・・が、なかなか駐車できるところが見つからない。
そうこうしているうちに陽もすっかり落ち、空の上ではしきりに雷が光り、今にもひと雨来そうな雲行きだ。
雷鳴の轟く中あっちでもないこっちでもないとうろうろしていたが、先に呑む場所を決めて、店の人に停める場所を聞いた方が早いと気がついた。
でもって、いろいろ物色した結果「哲ちゃん」という店に決定。

IMG_20190514_085445気の良さそうなおかみさんに駐車場を訊ねたところ、やはりこのあたりは警察のうるさいところだったらしい。
店のすぐ近くのメインストリートがやたら広くて、そこに多くの車が駐車している。
なんでも明日の朝まで移動すれば、空いているところに自由に駐車してもいいという。
いろいろなところに行ったけど、こういうシステムは初めてだ。
いくら調子が良くても明日の朝まで呑むってことはあるまい。

「哲ちゃん」は「酒家」と書いて「きすや」と読む。
酒の隠語である「きす」を店名に使うとは、なにやらこだわりのありそうな店で期待が持てる。
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IMG_20190513_200601店内は10人ぐらい座れるカウンターと、小上がりがふたつあり仕切りがほとんどないオープンな造りになっている。
日本酒の方も「黒龍」「一本義」をはじめとして、地酒が充実している。
で、呑んだことのない「木の芽峠茶屋」や「米しずく」を注文。
肴も「ツブ刺し」「あさりの酒蒸し」「アジのたたき」なんかお願いしてめでたく乾杯。
体の方もよほど待ちかねていたらしく、砂地に水がしみ込むように酒が吸い込まれていく。

酒も肴も申し分ないいいお店なのだが、どうも日が悪かったらしい。
若い団体が小上がりに十人ほどいて、それがうるさいのなんの・・・。
IMG_20190513_195840昨日の気比の松原でどんちゃん騒ぎしていた若者たちもうるさかったが、閉鎖された空間だけにこっちの方がたまらない。
駐車場も教えてもらったので、ゆっくり呑もうと思っていたが、注文したものを平らげると早々に退散することにした。

敦賀の若い衆!! 元気がいいのはけっこうだが、すこしまわりの迷惑ってもんを考えた方がいいぞ。
って、自分たちの若い頃も負けず劣らずうるさかったんだべなぁ・・・。
一軒だけ呑んで帰ろうと思っていたが、そんなことでもう一軒呑み直そうということになった。
これがあやまちの始まりとも知らず、敦賀の町を歩き回った。

空ではあいかわらず雷鳴が轟き、稲光が走っている。
雨が降る様子はないが、生あたたかい風の吹く不気味な夜だった。
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